KeyShot4に関して

creoとのLiveLink

Tech-Onにも取り上げられてましたがKeyShot4の情報が公開されました。(つまり解禁されましたのでここでもご紹介させて頂きます。)今回実装される主な機能は

  • Livelink CAD側で形状が変更されるとそれがダイレクトにKeyShot側に反映される。(サポートされるCADは当初はPTC Creo, SolidWorks, Rhinoceros)
  • シボテクスチャのライブラリ(Mold-Tech社のもの)
  • レンダーパス

となります。

 

この中で注目しているのはレンダーパス機能です(影やリフレクション、ディフューズなどを別個にはき出す、V-Rayなんかではお馴染みの機能です。)今までは別個に設定する必要があったのですが、これによりその作業の手間がなくなります。広告系のコンテンツ作成では(製品デザイン/開発と異なり)ポスト、レタッチ、コンポジット処理をいかに効率的にやるかが鍵となります。LiveLinkに関しては非常に便利な機能です。特に工業デザインの用途で有益なのではないでしょうか。CADで形状をちょっと弄ってすぐに質感を見たい、というのはこのクラスタでの用途だと思われます。シボに関してはまだ現物を見ていないのでなんともいえませんが、日本はこの手のものの要求スペックが非常に高いのと、あとUVどうするんだろう、というのがあります。ご存じの通りCADで作ったNurbsデータにはUVがありません。この手のお仕事をやられたことがある方ならすぐわかると思いますが、単純なシボならともかくちょっと模様が入っているようなものだと製品に貼り付けるだけだとたちまち破綻しますよね。皆さん苦労されていると思います。KeyShotの中では、現状UVを作る機能が無いのでひょっとしたら他のソフトでUVをあてる必要が出てくるかもしれません

米Luxion社、CGツール「KeyShot」新版でCAD連携を強化、「シボ」の質感も用意

iRayとコースティクス

AreaというAutodesk社が提供するサイトがあります。主にエンタメ業界向けに情報発信を行っているサイトなのですがなかなか面白い記事もあり筆者=長谷川もよく見ています。日本版の他にアメリカ版もあるのですが(多分その他多くの言語があるのだと予想されます)、アメリカのフォーラムに面白い記事がありました。“iRay renderer not supporting caustics “というタイトルです。フォーラム風のスレッドなのですが、iRayのコースティクス表現に関するものです。多くの人がMentalRay、iRay両方を使ってレンダリングしたその結果も一緒に載せており興味深い内容です。かなり長いので結論(めいたものとこの場合お考えください。)をこちらでまとめてみました。

  • iRayはパストレーシングを使ってコースティクスを表現しようとしている。その手法はBDPT=bidirectional path tracingといわれるアルゴリズムで光線をカメラ、光源両方からトレースして真ん中で繋ぐという複雑なものである。
  • ただこの手法では制限があり、コースティクス内のリフレクションは表現できない。(文中でreflection of caustics またはdeep causticsと呼ばれているものです)表現しようとするとこの手法ではfirefliesというノイズが飛んでうまくいかない。
  • 上記の制限を具体的にいうと光源が小さい、オブジェクトが複雑な場合にうまくいかない。
  • 基本的にはコースティクスを表現するにはフォトンマッピングが未だ一番優れている。この手法もCPUベースでないと現状難しい。
  • 一緒に比較したMentalRay(こちらはCPUベースです)では全てうまく出来ている。

下の写真を見て頂くとよくわかるとお思います。上がMentalRayでレンダリングしたもの下がiRayでレンダリングしたものです。ここでいうとティーポットの影の中に表現されている真ん中の明るい部分がコースティクス内のリフレクションにあたります。こうしてみるとわかりやすいですね。MentalRayはご存じの通りいわばデファクトのそして100%CPUベースのレンダリングエンジンです。iRayと同じMental Images社(NVidiaに買収された会社)の製品です

こちらがMentalRayでレンダリングしたもの

こちらがiRayでレンダリングしたもの。

皆様ととやりとりをしていてよくCPUとGPUベースどちらがいいか?Biased vs Unbiasedどちらが良いか?みたいな話になります。この手の論議はマーケティングトークでして実はあまり実態がなく正直深く考察する必要はありません。また最近KeyShotより○×のほうが綺麗だ(あえて製品名は避けますがiRayを使用した製品です)みたいな話をビジネスパートナーからされたことがありまして、ここに書いたような内容を踏まえて割合きちんと議論しました。こちらの印象としてはマーケティングトークをただ鵜呑みにしていた感があったのですが、こういう場合はきちんとテストして製品の機能や特徴を見極めるのが重要ではないかと考えております。○×が良いとか悪いとか印象論だけで語っても意味がありません。大抵は一種の宗教論争に陥って結論が出ないと思われます。また特定の製品を批判することが本稿の目的ではないことを改めて念押ししておきたいと思います。

iRay renderer not supporting caustics

iRay caustics issues

僕はレンダリング界のエッシャー

CG-ARTS協会のサイト面白い記事を見つけました。KeyShotの生みの親であるHenrik Wann Jensen氏についてインタビューなども踏まえて詳しく書かれています。どちらかというとカリフォルニア大学 サンディエゴ校(UCSDの准教授でもあります氏のアカデミックな活動に焦点が当てられています。ただ、このような学術研究を基にしてKeyShotのような製品が生まれてきたこと、良い製品には優秀なテクノロジーが不可欠なことがわかり非常に興味深いです。フォトンマッピング、サブサーフェススキャタリングに対して主に解説を加えていますがこの手の技術の蓄積がいかに大事か、またテクノロジーだけではダメでそれを製品にしていく(言い換えれば市場を正しく捉えて正しい方向性で製品開発を行うこと)過程も非常に大事であること、また製品開発のあとに有効なマーケティングをきちんと行ってビジネスモデルを確立していくこともテクノロジー、製品開発に負けず劣らず重要であること、いろんなことがわかります。

次の一文が印象に残りました。

「正直なところ、この時点では筆者は未だJensen氏が考案したモデルの真価を掴んでいなかったといえるのだが、いざSIGGRAPHに参加してみると、エレクトロニックシアターで流された映像のインパクトは実に大きく、“サブサーフェース・スキャタリング”“トランスルーセント”という言葉は、SIGGRAPH 2001のトレンドワードとなった。その時筆者の脳裏に鮮明に浮かんできたのが「僕がライティング技術を使ってやろうとしていることは、ちょうど絵画においてエッシャーがやったことと同じだ」という同氏の言葉だった。

ちょっとした気づきがあってその後技術のブレークスルーが続くようです。
かなり長い文章ですが非常に興味深い内容です。

レンダリング界のエッシャー 前編

Arion vs KeyShot vs MentalRay

ちょっと面白いエントリーがありましたので紹介致します。レンダリングソフト世の中にあまたありますがここではArionとKeyShotとMentalRayを比較しています。(これもまた珍しい、面白い比較ですね)。出来上がったイメージを見てみるとArionとKeyShotは同等で時間はKeyShotのほうが早く、Mental Rayは明確に品質が悪い、という結果が出ています。もちろんこの手の比較は条件によって千差万別、いくらでも変わりますので一つの参考値として捉えておくのが良いと思います。特にMental Rayはパラメータをしっかり詰めないとノイズは飛ぶは、やたら時間がかかるはでなにもできません。

下の画像がその結果になります。

 

 

さて、この中で紹介されているArionというソフトはスペインのRandamControlという会社の製品です。この製品は今ちょっと流行っているUnbiased renderといわれるテクニックを用いているものです。同じジャンルの製品としてはMaxwell Render, NVidia iRayなどがあります。このunbiased(不偏、つまり偏りのない)という言葉の意味が個人的にはイマイチよくわかりません。数学的、統計学的に期待値が正しくなる手法らしいのですがディベロッパーに聞いてもよくわかりませんでした(数学あんまり強くないもので..orz)。ただ、推定するに例えば、間接光なりオクルージョンなりパラメータ単体で計算するのではなくシーンの中のあらゆるものを考慮してレンダリングする、という意味と考えられます。Maxwellとか確かに現実世界全てをシミュレートするようにレンダリングを行います。ソフトシャドウ、ハードシャドウといった個別のパラメータもありません。

で、ここで興味深いことをいくつか述べますと

  • Unbiasedが正確でbiased(KeyShotやMentalRayのようなタイプです)が不正確と対比的に考えられているがこれは誤り。Unbiasedの手法では全てのパラメータを考慮しているわけではない(例えばパストレーシングではコースティクスを扱えない)。一方PPM(プログレッシブフォトンマッピング)はbiasedの手法ですがこちらはコースティクスの扱いが上手い。(例えば上の画像でルビーの部分は明らかにKeyShotが一番綺麗です)
  • 言い換えると現状UnbiasedレンダラーでGPUを用いるものはガラスなどの屈折やコースティクスをうまく表現できない
  • Unbiased手法はサンプル数が多く必要なため処理が重く時間がかかる。(GPU計算でも上記で見るようにCPU処理よりむしろ時間がかかっています)つまりリアルタイム、インタラクティブ的な使用方法は現状不可能に近い。
  • NVidia iRayのプラットフォーム以外のものでも優れたレンダラーがある。機能でいったらむしろ上の場合もある。(例えばこのArionの場合もCPU,GPUを併用していますがiRayは使っていません。代わりにCUDAを用いたGPUレイトレーシング技術を採用しています。GPUを使っていてもiRayプラットフォームではないレンダラー他にもいくつかあります。小さい会社の製品が多いためあまりよく知られていないのですが)
  • GPUで計算すれば早くなるという単純な話では無い(レンダリング出来ないマテリアルがあってはそもそも意味がないので)

巷で言われているマーケティングトークと現実世界はかなり異なることがわかります。もっともこれは何もレンダラーだけでなく他の多くの事象にも当てはまります。常識は疑ってみた方がいいということですね。それはともかくこれも考えてみれば当たり前なんですよね。ゲームの世界でも、映像系でも、建築のビジュアライゼーションでも現在おそらくかなり多くの比率でV-Rayが使われているはずですが、これがハードウェア側の都合でぱっと入れ変わるということが起こるとは到底考えにくいです。ムーアの法則に従ってCPUが早くなるのには限界がある、GPU側のほうが伸びしろが大きい、といったこともよく言われますが(これが所謂マーケティングトークですね)、別にそれなら並列にすりゃいいじゃん、というのが今のマルチコア化の流れで同じ基盤の上に並べれば当然製造コストも安くなります。CPU側の方が現状コストメリット大きいのも当然です。それに共通のプラットフォームで書かれたプログラムは開発もデバッグも拡張性も全てにおいて非常に楽です。(例えばKeyShotがWin, Mac両プラットフォーム上で動くのはIntelチップに最適化されているからです)というわけで2つの技術は当分の間並列で使われていくのではないでしょうか。

Arionは当社では扱っておりませんが、サイトはこちらになります。ご興味のある方は一度試してみるとよろしいかと思います。