ユーザー事例2- 澄川伸一様

前回からかなり間が空いてしまいましたが、KeyShotユーザー事例第2回目をお届けします。今回は工業デザイナーの澄川伸一様にお話を伺うことが出来ました。

澄川さんは千葉大学を卒業された後ソニー株式会社に入社、ウォークマン、ヘッドフォンなど多くの製品のデザインを手がけられた後1992年に独立、以後も 医療機器、測定機器などのプロ用機材から一般向け家電、家具、浴槽、日用品まで多くの製品のデザインを行われています。(澄川さんの作品はこちら、略歴はこちらのサイトをご覧下さい)

 

 

問 まずお仕事の手順というか全体的な流れについて教えて頂けますか?

澄川  最初はまずスケッチを描きます。これはある種のタイムラグがある作業でして、お話を頂いてから大体一週間ぐらいかかります。そうすると突然どこかからか降りてきます(笑)。僕の場合は鉛筆で描いたものをスキャンしてpdfファイルに変換して。すぐにクライアントに送ります。初期段階からデザイン上の摺り合わせをするという点でこれは非常に有効です。

問 なるほど、スケッチの段階でクライアントと意思統一を行って次の段階に進むわけですね。

澄川 はい。その後はVellum(筆者注、工業デザイナーに幅広く使われている2DCAD & ドローイングツール)を使って図形を作っていきます。これはCADを使うというよりもスケッチをなぞっていくようなイメージですね。またワイヤーフレームを作っていく作業ともいえます。

問 なるほど。いきなり3Dツールにいくのではなくその前にVellumを使うわけですね。
(筆者注、実は以前、Vellumを開発/販売する会社にいた経緯がありこの辺り興味深く伺いました)

澄川 はい。で、次にRhinoceros(以下Rhino)で3Dモデリングを行っていきます。実はVellumを使っている時にある程度こういう曲面を作ろうとアタリはつけてあるのですが、実際の作業、つまりサーフェシングはRhinoで行います。美しい曲面で製品を表現するのが自分のデザインのセールスポイントと思っています。ですのでここはRhinoの機能を使ってそれを実現していくフェーズと考えています。2 rail、ネットワークサーフェスなどRhinoの機能を使いながら試行錯誤してきます。

問  話は少し(というかかなり)ずれますが、今のお話非常に興味深いです。3Dモデラーはデザイナーに馴染まない、みたいな話が良く出るのですが、ツール自体の機能やその限界はともかくとして、いきなり3Dで全てを行うのではなく澄川さんの手法では徐々に異なるステップを経てデザインや3D形状を完成させていくというプロセスを踏んでいるのですね。これですとツールの機能上の制限に引っ張られることなく使うことができます。例えば、Nurbsの場合は4辺が必ず隣り合った面と接していないといけないので、その制限上難しい。製品自体が持つ本物のキャラクターラインと本来なんの相関関係も無いので、という話をよく聞くのですが、この手法ですとそのような制限を上手くクリアできますね。

澄川 そうですか。僕自身は現状行っているRhinoを使ってサーフェシングするのが一番合いますね。実はソリッドモデリングも試してみたのですがあまり自分には馴染みませんでした。
(ここで話を元に戻してもらい)この後の工程ですが、Rhinoでモデリングを行って3Dモデルとして完成すると3Dプリンターで出力してモックを作る場合が最近は多いです。すぐに出来てしまうのが一番の魅力ですね。やはり現在の仕事においてはスピードが一番の意味を持ちます。昔と一番異なるところです。

問  なるほど。当たり前ですが手に持った感触、感覚というのはブツがないと始まりませんものね。そうなると3Dプリンターや造型機で作ったモデルはデザインモックの前段階みたいな位置づけなのでしょうか?

澄川 はい。またこの段階でデザインが承認される場合もあります。そうするとデザインモック
ともいえますね。仰るよう形状や感触をモデルを触ってみて確認するのが目的です。それが終わると次の段階でやっとというか遂にKeyShotが出てきます(笑)。

問 やっとですか?(笑)

澄川 モデルだけでは伝わらない表面の素材や質感を見てもらうのが目的です。いくつかバリエーションを作って検討してもらいます。ユーザー側に具体的なイメージをもってもらうのに非常に効果的です。

問 KeyShotを使う一番のメリットはどういった所でしょうか?

澄川 なんといってもマテリアルをアサインすると勝手に綺麗になっていく所が素晴らしいですね。実はKeyShotの前にいろんなツールを試したのですがCG特有のパラメータ設定が厄介でした。KeyShotは自分の好みのマテリアルを予め用意しておいてそれらを必ず使うといった感じです。具体的には金属ならヘアライン、つるつるのもの、サンドブラストそんな形で大ざっぱに分けておきます。マテリアルをあてたらスクリーンショットを撮って完成です。未だ製品の無い段階、実物が手元に無い段階でリアルな質感を表現できる。この部分は非常に強力です。いわば意志決定ツールですね。そういう使い方をしています。

問 ご自身のお仕事のワークフローにとても上手く組み込まれているように思えました。最後にですがKeyShotに関して何か機能上のリクエストはありますか?

澄川 HDRのバリエーションがもっと沢山あると良いですね。僕がデザインする製品は室内で使われるものが多いので室内のライトがもっとあると有り難いです。

問 本日はお忙しい所色々とありがとうございました。

後記
澄川さんの仕事場は都心から約30分、中央線沿線にあります。当日は事務所にお邪魔してお話を伺ったのですがとても魅力的な空間でした。また実際のデザインプロセスにおいてKeyShotがどのように組み込まれて活用されているかを伺うことが出来て非常に有意義な取材となりました。

RhinocerosはRobert McNeel & Associatesの登録商標です。